記事一覧

認知症の高齢者が骨折、リハビリ病院の先はどこへ?

2015.07.19 (日)

一人暮らしをしていた認知症の伯母さん(83歳)が転倒して骨折し、地元の総合病院に入院しました。手術の影響で夜中に騒ぎ出すなど、すったもん だしているうちに2週間が経ち、退院日を迎えました。この地域では治療が終わって病状が安定するとリハビリを行う回復期病院に移って療養を続ける医療連携 の仕組みが出来上がっていたので、ナオコさん(49歳・会社員)が自分で転院先の病院を探す負担はありませんでした。しかし、その先のことはどうなるのか よくわからず、ナオコさんの不安はあまり解消されていません。伯母さんは無事に自宅に戻れるのでしょうか。
伯母さんの状態は、回復期病院に移る頃には、術後せん妄(*)の症状も治まり、だんだん落ち着いてきました。それでも転院から数日間は、回復期病院から「ご家族の付き添いをお願いします」と電話がかかってくるかもしれないとナオコさんはヒヤヒヤしました。
 *術後せん妄…手術をきっかけにして起こる精神障害のことで、高齢者に起こりやすい。手術後1~3日目から錯乱や幻覚、妄想などの症状が出現し、1週間ほど続いた後、次第に落ち着いていく。
 しかし、日中にリハビリで体を動かすようになったことで、伯母さんは生活のリズムを取り戻し、睡眠導入剤も適量に調整されて夜よく眠れるようになったので、急性期病院で体験したようなことは起こりませんでした。
 「やれやれ、これでひと安心だわ……」とナオコさんは胸をなでおろしました。こうして、伯母さんのリハビリは順調に進んでいきました。
 伯母さんのお見舞いに病院を訪れたある日のこと、ナオコさんは見知らぬ女性から声をかけられました。
 「うちの義母が四六時中騒いで、同室のお宅にもご迷惑をおかけしたようで、本当にすみません」。その言葉を聞いて、ナオコさんは他人事とは思えなくなりました。
 「いいえ、うちの伯母も前の病院では夜中に騒いだので、個室に入れて付き添いをつけて大変だったのです……。高齢者を抱えているとお互いさまですよ。それで、お義母さまはどうなさったのですか。やはり個室で付き添いですか」と、ナオコさんはあえて尋ねてみました。
 その女性が言うには、義母にはもともと認知症があり、入院してしばらくすると昼夜を問わず5分おきにトイレに行きたいと訴えるようになったそうで す。「不安やストレスのせいじゃないかと言われて、近くの心療内科に連れて行ってもらい治療を受けました.。でも、ちっともよくならなかったのです。そのうち、看護師さんやリハビリの方を激しく責めるようになって・・・・・・。辛抱強く対応していただいたのですが、リハビリを続けるのは難しくなり、退院することになりました」。
 (リハビリができない状態になると即退院になるのか……)。ナオコさんは少なからずショックを受けました。回復期病院の目的は、集中的なリハビリ によって日常生活動作(食事、着替え、入浴、排泄、移動など)を改善し、寝たきりを防止したり、自宅をはじめ生活の場に戻したりすることなので、この対応 はもっともなことなのですが、回復の途中で行き場を失った患者や家族はどうなるのでしょう。
 「それで、この後はどうなさるのですか」とナオコさんは重ねて尋ねました。
 「病院の先生たちも看切れない義母を自宅で介護することなんてできません……。ケアマネジャーさんと相談し、とりあえず認知症病棟がある精神病院 に入院させることにしました。でも、長くは入院できないようなので、ケアマネジャーさんに義母が安心して暮らせるところを探してもらっているところで す……」。そう話すと、女性は大きなため息をつきました。
 (回復期病院も精神病院もちゃんと回復するまで入院させてもらえないのに、高齢者が安心して暮らせる場所なんてあるのかしら……。自宅で介護でき ないとなると、いろいろな医療機関を探して転々とすることになるのね)。ナオコさんは高齢者やその家族が置かれた厳しい現実をあらためて知り、暗澹たる気 持ちになりました。
 「一人暮らしの伯母さんは、この先いったいどうなってしまうの。私が引き取って面倒をみるのは絶対に無理……」。ナオコさんは不安が募りました。
 回復期病院の入院期間は、保険診療によって疾患ごとに決められていて大腿骨骨折は90日以内となっていますが、その人の病状やリハビリの目標、経 過、退院後の生活準備などによっても入院期間は長くなったり短くなったりします。一般的に入院すると医師や看護師、リハビリスタッフ(理学療法士、作業療 法士、言語聴覚士)などが患者の日常生活動作の程度を確認し、リハビリ計画書が作成されます。それにもとづいて日々のリハビリや介護が行われるとともに、 担当スタッフ全員で患者の状態について話し合い、入院目標や退院後の生活目標を設定します。
 回復のめどが経つと退院日を知らされ、退院後の生活に向けた話し合いが始まります。回復期病院においても、治療や手術を行う急性期病院同様、地域 医療連携室のソーシャルワーカーが中心になり、退院後(転院を含む)の生活の相談に乗ってくれます。一人暮らしで認知症がある人は家族と同居している人よ り生活支援サービスが必要になり、退院後の調整にも時間がかかることが予測されるため、早めに対応してくれる傾向があるようです。
 また、入院前に介護保険サービスを利用していた場合は回復期病院のソーシャルワーカーからケアマネジャーに連絡が入り、退院後の生活の話し合いにはケアマネジャーも加わります。