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介護保険不正請求

2015.08.09 (日)

今、東京都の介護保険に関する相談窓口に、毎月約100件の苦情が寄せられる。中でも国民を欺く大きな問題が介護業者の不正請求。
介護保険制度を巧みに悪用した仰天手口が蔓延していた!
介護保険誕生から5年。これまで不正請求によって232もの事業所が営業権を剥奪された。その典 型的な手口を用いていた千葉市内の介護業者『G』は去年7月、不正請求を行ったとして営業権を失った。架空の介護サービスを捏造し、その報酬を行政に請 求、不正な利益を得る手口で、のべ217件もの不正請求が行われた。
Gの元代表は定年退職後にヘルパーの資格を取り、介護事業所を設立。我々は故郷に戻り一人きりで暮らしていた元代表に話を聞いた。元代表は不正をしてしまったことについて「自分でも分からない」と答えた。
我々は不正請求を行う業者で働いていた人物と接触。不正に手を染める理由を聞くことができた。「介護の仕事は儲かるぞ、と色んな人が事業参入して来 た。最低限の収入がなければ事業がやっていけない。そこで結局、請求の内容を変えて利益に繋げる。よそも同じことやってるじゃないか、黙っていれば分から ない、と」。
介護業者は保険制度誕生で3倍にも増加し過当競争の状態。その競争を生き抜くため元代表は不正請求に手を染めたのであろうか。
一方、計画的に介護保険を食い物にしていた福岡県の介護法人『A』は、不正請求のマニュアルを作成していた。職員の親を利用者として登録、サービス を行わず介護報酬のみを請求。勤務実態のない人物の出勤簿を作りその人件費を騙し取るなど、6つの系列事業所で組織的に不正請求を繰り返していた。騙し 取った額は約1億4千万円。その悪質さから行政が詐欺罪で告訴する事態となった。
しかし、不正請求を利用者側は気がつかないものなのか?
介護業者の不正を告発する福祉・介護オンブズマン、日下部雅喜氏は利用者には行ったサービス通り請求し、行政には改ざんした請求書を出すため利用者は不正請求のことなど、知る由もないという。
では行政のチェックはどうなっているのか。
介護報酬の請求は国民健康保険団体連合会に提出される。審査はコンピュータでのデータ処理。利用者に行われたサービスの報告書とそれに対する請求書を照合し双方に食い違いがないかをチェック。つまり数字が合っていれば例え不正請求でもパスしやすい。
同連合会・宮脇課長は「今のシステムではコンピュータじゃチェックは効きません。サービスを行う事業所に対しては自主的にモラルを持って請求していただく というのが連合会の求める姿です」と。この審査機関は各都道府県に一ヶ所のみ。東京都の場合は毎月75万件もの請求を審査するため、ひとつひとつの細かい チェックは不可能に近い。
不正が発覚するきっかけの約50%が内部告発。しかもほとんどの行政が立ち入り検査を3年に一度しか行っていない。介護問題に詳しいジャーナリスト・山田 正和氏は「事前に業者に対し、何月何日にチェックに行くので書類を準備して下さい、と行政から指示が出ます」と検査方法も問題ありと指摘する。
多くの行政は「帳簿書類が速やかにチェック出来るなど検査がスムーズに行えるように」と1ヶ月ほど前に検査の日を通知しているという。だが検査までの1ヶ月で悪質な業者は帳簿を改ざんしてしまう。「実際に残っている物が書き直した物であれば証拠がない」と前出の元職員。
不正請求の被害額は5年で100億円以上。
ただでさえ利用者急増でひっ迫する介護保険の財源を破綻の危機へと追い込んでいるのだ。