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認知症学ぶ子どもたち…特徴や接し方、理解深める

2015.06.25 (木)

いじめなくす効果も期待
 10年後に700万人の発症が見込まれる認知症。高齢者の5人に1人が認知症になる時代に備え、当事者の孫世代の子どもたちに、病気の特徴や認知症高齢者との接し方を学び、考えてもらおうという活動が広がっている。
 「以前は、認知症の人と言えば、訳も分からず叫んだりして、近くに寄れないと思っていました。けれど、そういう行為も、本人には意味があってのことだとわかり、怖いと思わなくなりました」
 千葉市内の中学2年の女子生徒(13)は昨年3月、千葉大病院と同市が共同開催した「認知症こども力プロジェクト」の親子教室に母親(46)と参加。クイズ形式の講義や質問コーナーを通じて、認知症に抱いていた印象を一変させた。
 「何もわからなくなるわけじゃない。できることもある」「細かい出来事は忘れても、嫌なことをされた、良いことをされた、という感情は残る」「誰でも認知症になる可能性はある」などの知識を、専門医や認知症の人の家族の説明から学んだ。
  看護師になりたいという女子生徒。親子教室の経験を生かし、昨夏、近くの介護施設の祭りでは難聴の認知症女性と筆談を交えてスムーズに会話できた。「同じ 事を何回も言ったりしますが、あまり身構えず普通に話せばいいのかなと思います。身近な人なら認知症になっても驚かずに接することができそう」と話す。
 このプロジェクトについて、千葉大病院神経内科講師の平野成樹さんは「知識不足から、家族と認知症の人の交流が乏しくなるのは望ましくない。子どもたちに早い段階から認知症を学んでもらうことは、社会全体の認識の底上げにつながる」と、企画の意図を語る。
  さらに、〈1〉子どもたちが加齢や障害を理解することで、弱い立場の子らをいじめなくなる〈2〉認知症の高齢者も、子どもと触れあう機会が増えれば気分が 和らぎ、問題行動が減る〈3〉仕事などで忙殺されがちな大人が子どもに触発され学ぼうとする――などの波及効果を期待する。
 昨年スタート した同プロジェクトだが、今夏開く小中学生セミナー(4日間)では、小中学生に、子ども向けの認知症パンフレットを作ってもらう予定だ。グループホーム見 学もする。「大人に教わるだけでなく、自分たちで大事だと思うポイントを考えてもらいたい」という思いも込める。
 千葉市では、このプロジェクトをきっかけに、他の子ども向け事業でも、グループホーム訪問などの認知症啓発につながる活動をしている。
 子どもへの認知症啓発は、今年1月に策定された認知症国家戦略「新オレンジプラン」に も重要性が示されており、各地で広がっている。3世代同居が多いという岩手県では2007年から、岩手医大の医師や心理士が中学校に出向き、「孫世代のた めの認知症講座」を延べ約100校で開いてきた。5月に開催した中学校では、生徒から「(同居の祖父母に)何度も同じことを言われてイラつくこともありま したが、(講座を聴いて)もっと優しくしようと思いました」との感想が寄せられた。(高橋圭史)

認知症に強いケアマネジャー、どこにいるの?

2015.06.23 (火)

要介護度の判定結果をめぐる問題は一件落着したものの、認知症を患う一人暮らしの伯母さん(83歳)が介護保険サービスを始めるには、まだまだ準備が必要です。
 次はケアマネジャー選びです。
 ケアマネジャーはサービスのプランを組み立て、主治医をはじめ各サービス事業者との調整を行う重要な役割を担っています。
 つまり、認知症の伯母さんが住み慣れた自宅や地域で安心して暮らしていけるかどうかのキーマンとなるため慎重に選びたいものです。
 認知症の人の場合、どのようなことに気をつけてケアマネジャーを選択すればよいのでしょうか。
 ナオコさん(49歳・会社員)と一緒に考えてみます。
 「ケアマネジャーに支払う交通費を節約するために、多くの人は自宅から近い居宅介護支援事業者を選んでいる」という話を、地域包括支援センターの 窓口で聞いたナオコさん。納得しかけたものの、「いやいや……薬局だって病院に近いだけで選んじゃいけなかったし」と思い直し、「認知症の対応に詳しいケ アマネジャーさんはいないのでしょうか」と改めて聞いてみました。
 すると、窓口の女性は「介護保険を利用される高齢者の場合、何らかの認知症の症状を抱えている人が多いので、医療系・福祉系に関係なく、どのケアマネジャーさんも対応できますよ」と教えてくれました。
 「医療系・福祉系って、いったいどういうこと?」。ナオコさんは新たな疑問を持ちました。
 ケアマネジャーは公的資格で、各都道府県が毎年1回、ケアマネジャーの試験を実施しています。この試験では保健・医療・福祉分野の国家資格などを 有していることが受験条件の一つに設定されているため、どのケアマネジャーも基本的に自分が得意とする専門分野があります。その専門分野に応じて医療系・ 福祉系と呼ばれているのです。
えば、人工呼吸器やIVH(中心静脈栄養)を装着している人、気管切開のカテーテル(管)を挿入している人、胃ろうを造設している人など、いわゆる 「医療依存度が高い人」は、医学的知識や臨床経験を持っている医療系ケアマネジャー(特に看護師出身者)のほうが適切に対応してもらえる可能性が高いとい われています。
 認知症の場合は、認知症が進行したり、他の身体的な病気を併発したりして医療依存度が高くなれば別ですが、ナオコさんの伯母さんのように認知症があっても身体的問題がそれほどない人は、医療系・福祉系とケアマネジャーの専門分野にこだわらなくていいようです。
解決策①
ケアマネジャーは医療分野と福祉分野が得意な人にそれぞれ分かれるが、身体的問題がそれほどない認知症の場合は、ケアマネジャーの専門分野にこだわらなくていい。

 ただ、ケアマネジャーの中には「認知症ケア専門士」の資格を取得している人が少なからずいます。認知症ケア専門士とは、日本認知症ケア学 会が認定する資格で、認知症ケアに対する専門的な知識と技術、倫理観を備えています。2015年1月現在、全国に2万9008人の認知症ケア専門士がお り、そのうち1万5415人はケアマネジャーの資格を持っている人です。
 認知症ケア専門士の資格を持っているケアマネジャーに担当してもらうことで、生活支援だけでなく、家族が最も困る認知症の周辺症状(はいかい、ろ う便、物盗られ妄想、せん妄、幻覚・錯覚、うつ、暴力・暴言・介護拒否、失禁、睡眠障害・昼夜逆転、帰宅願望、異食など)についても的確なサポートを早め に受けられる可能性があります。
 認知症ケア専門士および認知症ケア専門士が在籍する施設・団体については、認知症ケア専門士公式サイトで検索することができます。ぜひ参考にしてください。
解決策②
認知症ケア専門士の資格を持つケアマネジャーに担当してもらうことで、家族が最も困る認知症の周辺症状についても的確なサポートを早めに受けられる可能性がある。

 こうして、ナオコさんは認知症ケア専門士の資格を持つケアマネジャーを探すことにしました。認知症ケア専門士公式サイトを利用して認知症 ケア専門士が在籍する施設・団体を検索すると、伯母さんが暮らす区内で複数の施設・団体が見つかりました。次に、ナオコさんは地域包括支援センターからも らってきた事業者リストと照らし合わせて認知症ケア専門士が在籍している居宅介護支援事業者を拾い出し、リストに掲載されている詳細情報から各事業者のケ アマネジャー数や併設サービスを調べてメモに書き出しました。
・A居宅介護支援事業者…ケアマネジャー/4人 併設サービス/訪問介護、訪問看護、デイサービス、通所リハビリ
・B居宅介護支援事業者…ケアマネジャー/6人 併設サービス/訪問介護
・C居宅介護支援事業者…ケアマネジャー/2人 併設サービス/訪問介護、認知症対応型デイサービス

 「うーん、この候補の中からどこを選べばいいのかしら?」とナオコさんは迷いました。
 そして、目に留まったのが、「C居宅介護支援事業者」に併設されている「認知症対応型デイサービス」でした。ナオコさんは、ひきこもりがちになっ ている伯母さんにデイサービスを定期的に入れたいと思っていたので、「この事業者のケアマネジャーにプランを頼めば、併設されている認知症対応型デイサー ビスを優先的に利用させてくれるかも」と考えました。
 「ここがいいかしらね……」。ナオコさんはメモを眺めながらつぶやき、第1候補として浮上してきた「C居宅介護支援事業者」を赤丸で囲みました。 このナオコさんの選び方、あながち間違いでもないのですが、介護報酬(介護保険で提供したサービスに支払われる報酬)の中には「特定事業所集中減算」とい う項目が設定されており、ケアマネジャーが特定の事業所に80%を超えるサービスの紹介を行っていると「サービスの囲い込み」と判断されて介護報酬の減算 対象となります。
 つまり、利用者が公平にサービスを選択し利用できる仕組みになっているため、ナオコさんが認知症対応型デイサービスを利用したいという理由でC居宅介護支援事業者を選んだとしても、優先的に利用させてもらえるとはかぎらないのです。
 では、何を重視して居宅介護支援事業者を選べばよいのでしょうか。
 それは、「ケアマネジャーの人数」です。ケアマネジャーの人数が1~2人という小さな規模の居宅介護支援事業者の場合、1人のケアマネジャーが担当する件数はかなり多いことが予測されます。そのため、きめ細かいサポートや対応を期待できないおそれがあります。
 一方、ケアマネジャーの人数が多いと、きめ細かい対応に加え、事業者全体でそれだけいろいろな事例を豊富に経験しているので、何か困難な問題が起 こったときも担当のケアマネジャー1人で抱え込むのではなく、他のケアマネジャーもこれまでの経験を踏まえたうえで知恵を出し合い、さまざまな工夫をしな がら乗り越えてもらえる可能性が高いといえます。
解決策③
ケアマネジャーの人数が多い事業者では、ケアマネジャー1人が受け持つ人数が少なく、きめ細かいサポートをしてもらえる可能性がある。また、問題が起こったときはケアマネジャー全員の経験や知恵を出し合って対応してもらえることも期待できる。

 さらに、認知症の人がケアマネジャー(居宅介護支援事業者)を選ぶ際に押さえておきたいのが「24時間相談体制が整備されているかどうか」ということです。ナオコさんの伯母さんは一人暮らしなので、この条件は特に外せません。
 また、介護保険のサービスだけでは認知症の一人暮らしを支えきれないこともたくさん出てきます。このときに利用したいのが地域のボランティアなど が提供している介護保険外のサービスです。「介護保険外のサービスを積極的にケアプランに取り入れているか」ということも正式に依頼する前に確認しておき ましょう。
 こうしてナオコさんはケアマネジャーの人数が最も多かったB居宅介護支援事業者のケアマネジャーにケアプランを依頼することにしました。もちろん24時間相談体制が整備されていて、介護保険外のサービスも活用しているということは確認済みです。
解決策④
認知症の場合は、24時間相談体制の整備状況や介護保険外のサービスの活用状況などもあらかじめ電話などで確認しておく。

 担当のケアマネジャーは看護師出身の40代女性で、主任ケアマネジャー(*)の資格を持つベテランの 人に決まりました。認知症ケア専門士の資格は持っていませんでしたが、認知症に対する経験も豊富で、「必要に応じて事業所内にいる認知症ケア専門士の資格 を持つケアマネジャーとも相談しながらサポートしていきますので、ご安心くださいね」とにこやかに対応してくれたので、ナオコさんも伯母さんも心強く思い ました。

 *主任ケアマネジャー…ケアマネジャーとしての実務経験が5年以上あり、主任介護支援専門員研修を修了した人に与えられる資格。地域のケアマネジャーのまとめ役的存在として指導・育成・支援・相談などの業務にも携わる。

 「地域包括支援センターの資料やインターネットで入手できる情報はかぎられるから、自分が知りたい情報は事業者に電話をかけて積極的に集 めることも必要ね。何よりも相性の問題があるから最後は直接会って決めることが大事だと思うわ」とナオコさん。ちなみにケアマネジャーと相性が合わないと きは、事業者の責任者に申し出れば変更してもらえます。
 さあ、いよいよケアプランの作成が始まります。一人暮らしの認知症の人は、どのようなことに配慮しながらケアプランを組み立てればよいのでしょう。伯母さんのケースをもとに具体的に考えてみたいと思います。このお話は次週に続きます。

認知症の相談センター開設 兵庫県篠山市役所

2015.06.19 (金)

認知症に悩む人や家族らを対象にした「もの忘れ相談センター」が15日、篠山市役所第2庁舎の1階で業務を始めた。
 市によると、市内の高齢者(65歳以上)1万3213人中2550人が要介護認定を受けており、このうち認知症とされる人は1394人に上るとい う。市地域福祉課は4年前から、福祉に関する相談窓口を設けているが、25%前後が認知症に関する相談だった。認知症という呼び方に抵抗を感じる人もいる ことから、センターには「もの忘れ」という名称を採用。専門相談員2人が平日午前8時半~午後5時15分に相談を受け付ける。問い合わせは同センター (079・552・5346)へ。

欧米に寝たきり老人はいない」のか?1

2015.06.17 (水)

『欧米に寝たきり老人はいない―自分で決める人生最後の医療』(中央公論新社、税抜き1400円)という本が出版されたようです。内科医である宮本 顕二・礼子先生ご夫妻が、スウェーデン、オーストラリア、オーストリア、オランダ、スペイン、アメリカと6か国にわたる終末期医療を視察した体験をもとに 書かれものです。
これは、読売新聞の医療サイト「ヨミドクター」で連載されたブログ「今こそ考えよう 高齢者の終末期医療」をまとめたもので、同ブログにおける、豊富な経験に基づく大先輩の考察には、私自身、大変勉強させていただきました。宮本先生の問題提起には、私もまったく同感です。ぜひ、多くの方々に読んでいただきたい内容だと確信しています。
ただ一点だけ、どうにも気になることがあります。それは、『欧米に寝たきり老人はいない』というタイトルなんですね。
見学に行かれたのは、どちらかというと先進的な終末期ケアの現場だったんじゃないかと拝察します。ランダムサンプリングならまだしも、外国人の見学を受け入れるような(紹介された)施設での経験をもって、「欧米では・・・」と置き換えちゃうのは、ちょっと乱暴だったかな?
国際長寿センターが、日本、フランス、イギリス、イスラエル、オーストラリア、オランダ、韓国、チェコの8か国の医療従事者を対象に、以下の症例を提示したうえで「人工栄養補給を行うか?」を問うという興味深い調査を実施しています(国際長寿センター:末期の医療、介護と看取りに関する国際比較調査.2011年3月)。
【80歳男性】自宅で妻と二人暮らしをし ている。認知症(アルツハイマー病)と診断されてすでに10年が経ち、意識障害はないものの、近親者や介護士が呼びかけても目を動かす程度であり一般的な 意思疎通には多大な困難がある。また、半月前にひどい熱と咳のために病院へ受診したところ、肺炎と診断された。現在は、食物を呑み込むことができなくなっ てきており、点滴による薬剤と栄養剤の投与を行っている。口からの栄養摂取は不可能なため、十分な栄養摂取のためには近い将来に人工栄養摂取が必要となる が、この治療を行ったとしても余命は長くないと診断されている。妻(80)は在宅での生活の継続と看取りを希望しており、また少しでも長い時間を一緒に過 ごしたいと希望しているものの、妻自身の介護能力は低く、近隣に近親者はいない。
ここでの人工栄養摂取とは、経鼻栄養(鼻から管をいれて、胃に栄養剤を流し込む)もしくは胃ろう(腹部に胃につながる穴をあけて栄養剤を流し込む)を意味します。
たしかに日本は高いですね。でも、「欧米にはいない」と断じるのは、(限られたサンプリングですが)ちょっと無理があるように思います。
イスラエルの人工栄養補給が高いのには事情があります。というのも、同国では終末期患者法が定められていますが、「終末期であって、患者の事前指示 書があれば、治療を差し控えることは認められるが、水分と食料を差し控えることは認められない」からです。ここには宗教的な背景があるようです。
一方、フランスは確かに対極にあります。終末期患者への人工栄養を推奨していないレオネッティ法(2005年)があること、および同法が成立するまでの国民的議論が反映していると思われます。
この調査は、アメリカを対象としていませんが、一昨年5月の米国老年医学会の声明では、「米国におけるナーシングホーム入所者の34%が経管栄養を挿入されている」とあるので、推して図るべしですね(米国老年医学会:進行認知症患者に対する経管栄養についての声明)。

介護認定、受け直すことはできるの?

2015.06.14 (日)

マンションで一人暮らしを続けていたナオコさんの伯母さん(83歳)に認知症の疑いが……。
 ナオコさん(49歳・会社員)は、かかりつけ医のアドバイスに従い、生活支援を受けるために介護保険を申請しました。
 ところが届いた認定審査の結果は「要支援2」。
 何度も同じことを聞いたり、ひきこもったりするなど伯母さんには明らかな異変がみられるのに、ナオコさんはこの結果に納得ができません。
 認知症の人が正しい判定を受けるために、家族はどのようなことに注意すればよいのでしょうか。
介護保険の手続きにあたり、ナオコさんはやってはいけないことをやってしまいました。それは、訪問調査のとき、家の中をきれいに片づけてしまったことです。他人に散らかっている部屋を見られたくないというナオコさんの気持ちはよくわかります。
 しかし、「介護の手間がどのくらいかかっているのか」ということを調べるのが訪問調査の目的なので、訪問調査員には散らかっている部屋に上がって もらい、伯母さんが自立した生活を送ることが難しくなっていることを視てもらったほうが正しい判定にもつながり、得策だったのです。
解決策①
 訪問調査の目的は「介護の手間がどのくらいかかっているのか」を調べることなので、部屋を片付けたりせず、ありのままの生活の様子を見てもらうことが大事。
 「たった1回の訪問調査で、認知症の伯母さんが置かれた状況を正しく理解してもらうには、十分な準備が必要だったのね……」とナオコさんは後悔しました。やっ ておきたい事前準備としては、①訪問調査の質問項目にあらかじめ目を通し、どのように答えるのかじっくり考えておく、②介護記録をつけておく、③調査を受 ける際は患者の普段の様子をよく知っている人が複数人で対応する、といったことが大切だといわれています。しかし、これまで介護保険とは無縁だった一般の 人にとって、特に①の準備を自分たちだけで行うのはなかなか大変です。このようなときに相談したいのが地域包括支援センターのケアマネジャーです。
 振り返ってみれば、区役所の職員が地域包括支援センターのことをせっかく教えてくれたのに、相談を後回しにしてしまったこともナオコさんの失敗でした。
 地域包括支援センターのケアマネジャーには、認知症の状態や普段の生活の様子、患者と家族が困っていることなどを正直に話したうえで、訪問調査の質問項目にどのように答えれば正しく状況を理解してもらえるのか具体的にアドバイスしてもらうとよいでしょう。
解決策②
 地域包括支援センターのケアマネジャーに相談し、訪問調査の質問項目にどのように答えれば正しく状況を理解してもらえるのか具体的にアドバイスしてもらう。

 さらに、訪問調査員に患者の様子を伝えるうえで気をつけたいポイントは次のとおりです。
●訪問調査員に患者の様子を伝えるうえで気をつけたいポイント
 食事、排泄(はいせつ)、着替え、移動などの生活基本動作は単に「おおむねひとりでできる」ではなく、「この部分は介助が必要」 「この部分はひとりではできない」といった具合に自分ではできないことをしっかり伝えることが重要です。同時に「自宅が狭く、車イスで移動ができない」 「賃貸住宅なので手すりをつけられない」などの住環境の限界についても伝えておきましょう。
 訪問調査員の前では現れない認知症状についても「同じことを何度も聞いてくる」「ゴミ出しの日がわからなくなっている」「外に出たがらない」など、実例を挙げて具体的に説明します。

 なお、訪問調査票とともに介護認定審査会の判定に大きな影響力を持つ「主治医の意見書」にも正確な情報を記載してもらうことがとても大切 です。そのためには主治医が意見書を作成する前に上記の注意点をまとめたメモ、あるいは介護記録のコピーなどを渡し、主治医にも理解を深めてもらうように します。
解決策③
 介護認定審査会の判定に大きな影響力を持つ「主治医の意見書」にも正確な情報を記載してもらうことが大切。主治医にも普段の様子をよく伝えておく。

 さて、自分の失敗に気づいたナオコさんは「要介護認定の審査を受け直し、要介護度を正しく判定してもらいたい」と思いました。調べてみる と、都道府県に対する不服申し立ての制度があることを知りました。これは要介護認定の判定結果を知った翌日から60日以内に各都道府県の介護保険審査会に 審査請求できる仕組みです。ただし、裁定結果が出るまでに数カ月かかります。
 「うーん、不服申し立てとは……。ケンカを売っているようで心理的にハードルが高い制度だわ……。それに新しい判定結果が出るまでに時間もかかりそうだから、介護サービスを早く使いたい伯母さんには考えものね」。
 しかし、諦めきれないナオコさんは、ダメ元で地域包括支援センターのケアマネジャーに相談することにしました。すると、ケアマネジャーは「希望す る要介護度に認定されない可能性はありますが、要介護認定を受け直すには区分変更という方法もあります」と提案してくれたのです。
解決策④
 要介護認定の審査を受け直したいときは、地域包括支援センターのケアマネジャーに相談し「区分変更」の申請を行う。その方法が難しい場合は、各都道府県の介護保険審査会に審査請求できる「不服申し立て」の制度もある。

 区分変更とは、要介護認定を受けている人で心身の状態が著しく変化した場合、認定有効期間内(申請から原則6~12カ月間)でも更新時期 を待たずに要介護認定の審査を受けられるという仕組みです。申請の手続きは本人や家族が行うのが原則ですが、ケアマネジャーが代行することも可能です。
 ナオコさんは、地域包括支援センターのケアマネジャーに教わりながら書類を作成し、申請窓口の一つになっている地域包括支援センターに「要介護・要支援認定の区分変更申請」を提出しました。
 そして、ケアマネジャーのアドバイスに従って訪問調査に備えて準備を始めました。
 「できるだけ具体的に状況を説明することが大事なのよね」。このポイントを念頭に置いて、当日しっかり受け答えができるようにナオコさんはメモを 作成することにしました。さらに、訪問調査の当日は伯母さんの普段の様子を最もよく知っている隣の人にも同席してもらいました。
 区分変更の申請から約1カ月半。伯母さんのもとにようやく再認定の通知が届きました。ナオコさんの努力が実を結び、「要介護2」の判定となりました。すったもんだありましたが、これで一安心です。さて、次は何をすればいいのでしょう。
 「ケアマネジャーに依頼し、どのようなサービスをどのくらい利用するのかを決めるケアプランを作成します。そのケアプランに従って介護サービスが 始まります。このリストに掲載されている居宅介護支援事業者の中からケアマネジャーを選んでください」という説明とともに、ナオコさんは1冊の冊子を渡さ れました。
 それは、区内で活動する介護サービス事業者のガイドブックでした。さっそく居宅介護事業者のページをめくってみると180カ所の居宅介護支援事業 者が掲載されていました。そのリストからナオコさんが入手できる情報は、経営母体、所在地、電話受付時間、ケアマネジャーの人数、併設するサービスの5項 目です。
 「あの……、事業者が多すぎるし、これだけの情報ではどう選べばいいのかわからないのですが」。ナオコさんは地域包括支援センターの窓口の人に聞いてみました。
 「利用者さんの状況によっては、ケアマネジャーさんにひんぱんに自宅に来てもらうことになるようです。その際の交通費は利用者さんの自己負担になるので、自宅に近い事業者のケアマネジャーを選ばれることが多いみたいですよ」と教えてくれました。
 「確かに自宅に近いと何かと便利ですよね」
 ナオコさん、納得しているようだけど、本当にそれだけの理由で選んでしまっていいの?
 認知症の人をサポートしてもらうにはどんなケアマネジャーがいいのか、その選び方について次週ご一緒に考えてみたいと思います。
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アピタル編集部より
 この連載は、架空の家族を設定し、身近に起こりうる医療や介護にまつわる悩みの対処法を、家族の視点を重視したストーリー風の記事にすることで、制度を読みやすく紹介したものです。

杉並が南伊豆町に特養 地方入所 区民の理解カギ

2015.06.13 (土)

東京都杉並区が、伊豆半島の南端、静岡県南伊豆町に整備を進める特別養護老人ホーム。昨年末に区と県、町が共同で事業を行うことに合意し、先月、 町を窓口に施設を建設・運営する社会福祉法人の募集を始めた。過密と急速な高齢化に悩む都市が、地方と連携して高齢化に対処する全国初のケース。折しも、 有識者らの「日本創成会議」は、東京圏の高齢者に地方移住を提案した。移動距離で約二百キロ離れた特養入所を、区民はどう受け止めるか-。 (白鳥龍也)
 特養を整備するのは、町役場から北西に約五百メートル離れた町有地。中央公民館の跡地で、町立図書館がある一画以外、更地になっている。町は、海辺の温泉保養地のイメージが強いが、山に囲まれ海は見えない。
 計画では、ここに二〇一八年一月開園を目指して百床規模の特養を設置。ショートステイ用の十床を除く九十床のうちおおむね五十床を区、四十床を南 伊豆町など賀茂地域の入所者が利用する。運営法人に、県が約三億六千万円、区が約四億七千万円を補助する予定。町は町有地を無償で貸す一方、健康福祉セン ターを併設してホールなどを共用する。七十~八十人の職員雇用が見込まれる。
 「東京の人にきれいな空気を吸って元気になってほしい。地元の人に、介護の仕事の道が開けることもいい」。近くに住む女子高生(16)は、期待を話した。
     ◇
 今回の計画は一〇年、区が町の弓ケ浜海岸に所有していた全寮制特別支援学校「南伊豆健康学園」の廃止を決めたのが発端。区内の特養入所待機者は当 時約千九百人で、同年就任した田中良区長(54)が「都心に特養を整備しようにも、地価が高い上に用地もない。南伊豆への『保養地型特養』なら一床のコス トで二~三床確保でき、地元に雇用などの経済効果も生まれる」と、跡地活用を掲げた。
 当初から地元高齢者の受け入れを予定しており、町側もこれを歓迎。その後、地震・津波からの安全確保や利便性を考慮し、場所を内陸部の町有地に。 焦点は、特養新設の認可をする静岡県との調整に移った。都道府県は通常、地域内の需要を基に特養整備計画を作っており、域外住民の受け入れは想定していな い。
 また、区出身の特養入所者が七十五歳になると、施設所在地である静岡県の広域連合が後期高齢者医療制度の医療費を支払うことになり、受け入れ側の負担が増すことも問題化した。
 しかし、厚生労働省の「都市部の高齢化対策に関する検討会」が区の構想を評価。七十五歳以上の医療費についても昨年十一月、国側から、引き続き出身地側の負担とするよう法改正の意向が示され、一気に三者合意にこぎつけた。
     ◇
 残るのは、杉並区民の理解。車、および電車・バスでも、区から特養までは四時間前後かかる。夫婦で暮らす区内の女性(85)は「将来は家を売っ て、のんびりと南伊豆のホームに行きたい」と望むが、在宅で要介護4の母親(96)を介護している安永明生さん(67)は「施設介護は、わが街・わが家に 暮らすような環境が理想。頻繁に会いに行けないし、現時点では、母を南伊豆の特養に入れることはないでしょう」と慎重だ。

認知症疑われる男性、6割が「車を運転」

2015.06.12 (金)

記憶力などを調べる認知機能検査で認知症が疑われるレベルに相当した男性高齢者の6割が、自動車運転を続けているという大規模調査結果を、国立長寿 医療研究センター(愛知県大府市)の研究チームがまとめた。高齢ドライバーが増える中、男性では認知機能が落ちても多くが運転を継続している実態が明らか になり、対策が急務となっている。
 13日に横浜市で開かれる日本老年医学会で発表する。調査は2011~13年、大府市と名古屋市の65 歳以上の住民約1万人に実施。認知症の簡易判定に国際標準として使われる認知機能検査を受けてもらい、現在運転を継続しているか、聞き取り調査した。点数 に応じ、軽度、中等度(認知症疑いに相当)の認知機能障害に分けて解析した。重度に該当する人はいなかった。
 その結果、認知症疑い相当と 判定された男性162人のうち、運転を継続していた人は61%(99人)に上った。同様に判定された女性130人では、15%(20人)だった。日常生活 に支障がないレベルで軽度に認知機能が低下していた男性(2431人)では、86%が運転。同様の女性(2335人)は、37%だった。
 現在、75歳以上の運転者には免許更新時に認知機能検査を行っているが、「認知症の恐れ」と判定されても、過去1年間に信号無視などの違反がなければ、医師の診断なしに更新できる。13年には約3万5000人が「認知症の恐れ」と判定されている。
 調査をまとめた同センターの島田裕之・予防老年学研究部長は「認知機能が低下しても運転を継続している高齢者が予想以上に多く驚いた。本人や周囲が異変に気付いたら医療機関を受診することが大切だ。運転しなくても済む代替交通手段の充実なども急がれる」と話す。
(2015年6月9日 読売新聞)

年間介護費用 初の9兆円超え

2015.06.11 (木)

急速に高齢化が進むなか、平成25年度の1年間にかかった介護費用の総額は前の年度を4000億円余り上回り、初めて9兆円を超えたことが分かりました。
厚生労働省によりますと、平成25年度の1年間に介護サービスにかかった費用の総額は9兆1734億円で、前の年度に比べて4164億円、率にして4.8%増加しました。
介護費用は、15年前に介護保険制度が始まった当初、3兆6000億円余りでしたが、急速な高齢化が進むなか、今回初めて9兆円を超えました。
介護サービスを利用している人の数は1か月の平均で482万人で、前の年に比べて24万人、率にして5.3%増え、これまでで最も多くなりました。
介護サービスごとの内訳は、訪問介護などの在宅系のサービスにかかった費用は1か月当たり3614億円で、特別養護老人ホームなどの施設系のサービスでは2345億円でした。
介護費用はいわゆる団塊の世代がすべて75歳以上になる10年後の平成37年度には21兆円に上ると推計されています。
厚生労働省は「介護費用は今後も増加が見込まれるが、介護予防などを通じて増加幅を抑えるとともに、必要なサービスが行き渡るようサービスの充実を図っていきたい」としています。

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